なんの苦労にもぶつからず、順調に成長できれば、
それに越したことはありませんが、温室育ちは、
とかく芯の強さに欠けがちです。
それは、植物でも人間でも同じです。
日蓮聖人は「大難四か度、小難数知れず」の
ご生涯でした。
お釈迦さまも、提婆達多に九回も命を
狙われました。
「忍」という字は心の上に刃をつきつけた
形ですが、そういう緊張がないと、
人の心はすぐにゆるんで自分をあまやかして
しまうのです。刃をつきつけられても、
たじろがずに信念を貫き通すのが忍辱行です。
「一人前の経営者になるのには、赤字、労働争議、
お家騒動、悪口・中傷といったはしかを経験
しなければならない」といわれます。
死ぬか生きるかの崖っぷちまで追い詰められる
苦境や、自分の失脚を狙うような相手が、
自分にとって最高の師であったと分かるのには、
相当の難行苦行がいるわけです。
世のため人のためになると信じたことは、
どんな苦境にあっても、くじけずやりぬく。
そういう忍辱行を通して、
人は一人前になっていくのです。