昔の親は、自分の経験から得た哲学というか
人生観を持っておりました。
地震、雷、火事、親父というように、
父親は怖いもののひとつであったわけです。
がんこ親父という言葉が示すように、
自分なりの信念を持っていて、
それに違背するようなことを子どもたちがすると、
とたんに雷が落ちたものです。
もちろん、昔の親の考え方のすべてが正しかった
わけではありませんが、かくあるべきだという
生活の指針を持っていたのは確かです。
ですから、昔も親子の衝突はありましたが、
しかし、その衝突の原因は極めて明確で、
子どもは、叱られながらがまんすることを
学びましたし、たとえ衝突のあげく
親の意に反する選択をしても、
自分で選んだ道だと責任を自覚し、
かりに失敗しても、泣きごとなどあまり
言わなかったように思うのです。
山本七平氏が、「もの分かりのよい親というのは、
なんの方針も持たぬ親と同じだ」といった意味の
ことを書いておられましたが、
まことに耳に痛い言葉です。